Recent progress of advanced molecular science” 参加報告

国際融合創造センター・助教授・木村佳文

 京都大学大学院理学研究科において、平成15年2月17日(月)から19日(火)までの日程で、“Recent progress of advanced molecular science”が開催された。本研究会は21世紀COEプログラム「京都大学化学連携研究教育拠点」の交流事業プログラムの一環としておこなわれたものであり、韓国KAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)と京都大学との教官・学生の交流を行い、国際社会において通用する研究者の育成、ならびに高度な学術交流をおこなうことを目的としている。日本側のコーディネーターは大学院理学研究科化学専攻の寺嶋正秀教授斉藤軍治教授梶本亜教授らで、韓国側の代表は李億均教授らであった。韓国KAISTとの学術交流はすでに数年前から数度にわたっておこなっており、3年前には日本からKAISTへ教官と学生多数が学術交流にたずねた実績がある。今回、この交流事業をCOEプログラムの一環としてとりこみ、多くの韓国の学生を招待することができたのはまことに喜ばしいことだと思う。韓国側からの参加者は、李億均教授を代表とする教授3名と、学生11名の計14名であった。日本からは、研究会における発表者は教官3名(理学研究科2名、化学研究所1名)および学生18名(理学研究科14名、工学研究科4名)であり、研究会、交流会にはその他多くの教官、学生の参加があった。

 さて研究会であるが、17日にKAISTからの参加者が午後4時ごろに大学院理学研究科化学専攻に到着し、おおまかに3つぐらいのグループに分かれて研究室訪問をおこなった。今回こられたKIASTのメンバーは主に、表面ナノ構造、生体分子の構造解析、ならびに気相の分子分光を専門とするものが多く、ホストとなった研究室はそれぞれ対応する分野の研究グループである。その後簡単なレセプションがあり、早速、つたない韓国語や日本語をもちいた学生間の交流(もちろん英語での交流をふくめて)がおこなわれていた。

 18日にまる一日費やして、研究講演会がおこなわれた。口頭発表は午前および昼食をはさんで午後、KAIST側から3名、日本側から3名の教官による30分程度の発表がおこなわれた。その後、午後3時ごろから2時間にわたる学生によるポスター発表がおこなわれた。口頭発表では多少遠慮がちであったが、ポスター発表においては、非常に活発意見交換がおこなわれていたのが印象的であった。これはひとつには今回KASIT側からの発表内容と類似した、あるいは関連した分野が京大側からの参加者にも多かったことにもよるものと考えられる。さきにも述べたように、KAIST側からは(1)表面におけるナノ構造の制御に関する研究(Prof. Sehun Kim)、(2)生体分子の構造解析(Prof. Jie-Oh Lee)に代表されるような、ナノテク、バイオテクに関する研究発表が多く、また(3)環境科学などいままさに日本の文部科学省が推進する研究分野に対応する発表が数多く見受けられた。実際韓国側の事情を聞いてみると、日本と同様に、ナノテク、バイオテク、インフォメーションが主要な3つの柱としてKAISTでは進められているとのことである。私の関連する凝縮相のダイナミクスに関連するような基礎分野の研究発表は、理論化学(Prof. Eok Kyun Lee)関連のものがわずかにあっただけで、発表の多くはやはり何らかの実用化を指向するものであったように感じられた。

京大側の発表はCOEに参加する各研究室を代表するものであり、私としても各研究室の研究のひとつを知る非常によい機会となった。ポスターはみなそれぞれに工夫が凝らされており、日本側のプレゼンテーターの中にはハングルでポスターを製作し、またハングルでスピーチをおこなった学生もおり、今回のプログラムが単なる学術交流にとどまらず、日韓の文化交流の非常によいきっかけを与えたものと確信した。そのあと開かれた懇親会にも数多くの京大側の教官、学生が参加し、日韓交流を積極的に進めていたように思う。最終日は、excursionののち、帰国の途につかれたと聞いている。

今回の交流プログラムは、KAIST側の参加者にとっては日程的に強行軍であったにもかかわらず、到着日の研究室訪問などの交流会、ならびに翌日の討論会など疲れたそぶりもそれほど見せず、積極的に参加していただいた。次回からの企画においては、もう少し日程的にゆとりがあると、研究交流の面においてもさらに活発な意見交換ができると思う。また、今回のプログラムは学生の教育という面では目に見えて非常によい成果をもたらしたものと思う。学術交流の面においても、多くの類似する研究を抱えるKAISTとの交流は今後多くの実りをもたらしていくものと期待される。今後もこのプログラムが継続されることを期待する。